トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

mm010


← 第9号 | このページ | → 第11号  《発行一覧》

第10号 2008.8.19 まこと流まちづくりの地平

                     _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
                   _/_/ まこと流まちづくりの地平 _/_/
                 _/_/_/ 第010号_/_/ 2008/08/19 _/_/

_/_/_/ 呑兵衛逍遙
          雨水を一気に川へ流さない「流出抑制型」の都市づくりを
         局地的集中豪雨と神戸・都賀川災害にみる危機管理のあり方

         7月28日の午後、神戸市の都賀(とが)川で起きた局地的集中豪雨
        災害は、あらためて“対症療法”的な河川行政の欠陥を見せつけた。子
        どもたちをはじめ5名の尊い命を犠牲にしてもなお、議論の中心が「緊
        急時の避難対策」にかたより、都市部における瞬間的な河川水の増水の
        原因に目を向けて、根本的な対策に力点をおいた議論が乏しいのが気に
        かかる。

        _/_/ 市街地に降った雨水が排水管で川へ直結

         都賀川はじめ六甲山の南麓にある神戸市街地の河川のほとんどは、す
        でに100年に1回の洪水にも耐えられる河川整備が完成している。今
        回の豪雨による河川流量の大きさはそこまでにはいかないことから、川
        からあふれることはなかったが、コンクリートで固められた市街地の雨
        水が雨水排水管を通じて一気に川に流れ込んだことが、急激な増水につ
        ながったとみられている。都賀川は川底が流域の住宅地よりも高い天井
        川であるにもかかわらず、市街地に降った雨のほとんどが排水管を通じ
        て流れ込む仕組みになっていた。
        
         宅地化された山すそに集中的に降った雨、川底と両岸をコンクリート
        で固めた三面張りで流速を加速する川の構造、市街地に降った雨水の大
        半が一気に川に流れ込む都市構造──などの要因が複合的に重なって災
        害につながったとみられている。

        _/_/ 武庫川流域委員会の「総合治水」提言生かせ

         そうなると、武庫川流域委員会が執拗に議論を重ねて、これからの河
        川整備計画に重点的に組み入れるように提言した、流域全体での雨水流
        出抑制対策の議論を思い起こさざるを得ない。
        
         「武庫川の総合治水へ向けて」と題した兵庫県知事への提言書(20
        06年8月)では、これまでのように「洪水を川の中に閉じ込めて、洪
        水対策を川の中だけで考える」ことを改め、降った雨をできるだけ流域
        全体で流出抑制する方策を列挙した「総合治水」の考え方に特徴がある。
        山地では森林を育てて山の保水力を高めるとともに、農地や市街地でも
        降った雨をすぐに川に流さずに一時的に滞留させる流出抑制策をとるこ
        とにより、川への流量負担を軽減することをめざしたものだ。
        
         具体的には、田んぼに雨水を溜める“田んぼダム”構想や、学校の運
        動場や公園、大規模駐車場などに水深20〜30センチ程度の雨水を一
        時的に滞留させて川への流出を遅らせる対策の整備などである。個人住
        宅などでも一時的に雨水を貯留したり、降った雨を直接排水せずに地下
        浸透させる構造を推進するなどの雨水対策を、環境対策を兼ねて進めよ
        うという提言だった。

         こうした提言に河川整備を進める県は、考え方には賛同したものの、
        具体的な取り組みについては河川部局と教育や都市計画、農林部局など
        との縦割り行政の壁を破れず、基本方針の中では質量ともに対策のレベ
        ルをダウンさせている。自治体の中では、西宮市のように、すべての学
        校の運動場に流出抑制対策を整備するというところもあるが、河川整備
        対策の観点から総合的に取り組む行政姿勢は遅々とした状態である。

        _/_/「緊急避難」偏重の危機管理対策から脱却を

         また、洪水などの危機管理対策は、緊急時の避難体制や情報提供のシ
        ステムなども重要であるが、同時に想定を超える洪水に対しても致命的
        な被害を避けるための既存河川施設の強化や、都市構造の「耐水型都市」
        への転換を図ることも重要である。想定を超える洪水にも耐えられる堤
        防強化策や、地盤の低い浸水想定地域では地盤の嵩上げや土地利用規制、
        建物を高床式に変えるなど、都市政策によって都市構造を変えることも
        重要な対策である。
        
         こうしたことはいずれも、従来の縦割り行政の枠を越えて総合的に取
        り組まねばならないのだが、理屈の上では理解できても、行政組織上の
        壁を突破できない現実の前に立ち尽くしている。

         都賀川災害の一報を聞いた際に、最初に頭をよぎったのは、阪神・淡
        路大震災直後に市民や専門家から提案された神戸市東部地域の復興計画
        案の一つだ。鉄砲水に襲われる六甲山南麓の市街地の河川にたくさんの
        枝水路を横出しして街なかに水路を張りめぐらせ、密集市街地に水辺環
        境をよみがえらせるとともに、水路の下にもう一つの地下水路も造って、
        雨水の一時貯留、流出抑制の滞留槽に活用したらどうかという提言だっ
        た。
        
         提案は残念ながら、その後、闇から闇に葬られたが、河川整備と都市
        政策を一体的に考える発想があれば、と残念に思う。

         ※武庫川流域委員会の2006年8月提言書は下記のHP
               http://web.pref.hyogo.jp/contents/000053872.pdf

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ 明石まちづくり小史 <10>
           === アカウミガメ産卵の浜辺が語る「海辺の価値」===
              明石西部海岸の歴史を生かすまちづくり、とは?

         この夏、明石の西部にある林崎・松江海岸は、3年ぶり18回目にな
        るアカウミガメ上陸と産卵、大量に孵化して無事大海原へ旅立っていっ
        た“いのちのドラマ”に、わきかえった。6月4日未明に産卵が確認さ
        れ、産卵した103個のうち89匹が孵化し、約70日後の8月12日
        から13日にかけて74匹が自力で砂浜を脱出し海へ向かった。
        
         明石の西部海岸にはかつては毎年のようにアカウミガメが産卵に訪れ
        ていたが、海岸の浸食で砂浜がなくなり、途絶えていた。再び上陸が確
        認されたのは、1986年以降のことだ。以来、上陸が確認されたのは
        18回。うち16回は産卵が確認された。上陸、産卵した区域は、林崎
        から江井島まで約6キロの人工養浜海岸。大阪湾・播磨灘は、自然海岸
        は戦後ほとんど姿を消し、工場立地や都市整備のために埋め立てられた。
        砂浜らしきものが残るのは、大阪府南部の二色浜と人工養浜の須磨海岸、
        そして明石の西部海岸ぐらいなものだ。
        
         なかでも明石は、1970年代半ばから国の直轄で海岸浸食対策を兼
        ねて大規模に砂浜がつくられた。同海岸線は播磨灘の強い西風による波
        浪で海岸線の侵食が激しく、河川改修によって河川からの土砂流入が止
        まることが侵食に拍車をかけた。
        
         この海岸の浸食対策で成功したのは、沖合いにコンクリートブロック
        による離岸堤を築かず、沖合いへ向けて大きな突堤を自然石で築く工法
        を採用したことだ。突堤と突堤の間を運び入れた砂が行き来し、弧を描
        く。当初は流出する砂の補給に追われたが、海底に浅瀬ができて安定す
        るにつれて、砂浜も安定してきた。
        
         養浜事業を設計した担当者も、そこにウミガメが産卵に上ってくる効
        果までは計算していなかったと思うが、もともとウミガメは太平洋岸だ
        けでなく大阪湾から播磨灘にかけて上陸していたらしいから、自然環境
        が整えば再来することは不思議なことではなかった。ウミガメは静かで
        明かりの少ない浜辺に産卵するといわれている。明石の西部海岸は砂浜
        が広大なうえに、海岸沿いが都市化されていなく、夜間かろうじて光の
        ないところが見つかる環境にある。海岸沿いを観光施設などによって開
        発しなかった素朴な海辺が、結果的には功を奏した。
        
         20年前にアカウミガメの上陸・産卵が確認されてから、地元住民と
        市の海岸担当者、専門家が、産卵巣の保護やウミガメの足跡情報の提供、
        海岸清掃、夜間照明の消灯や器具の改良、夜間の花火規制など「ウミガ
        メの産卵する砂浜」を守っていく活動に取り組んできたことも、その後
        の継続的な上陸・産卵に影響を与えた。

         明石市は東西16キロの海岸線に沿った細長いまちで、「海峡公園都
        市」や「海峡交流都市」を標榜し、明石海峡の景観と海辺が「まちの命」
        でもある。海辺は単なる自然環境だけでなく、「魚のまち・明石」を育
        む全国屈指の水産業のまちでもあり、産業的にもかけがえのない海辺で
        ある。
        
         だが、戦後の歴史をひも解いてみると、その海辺を必ずしも大事にし
        てこなかった。1958年には明石港の外港建設に着手し、今の市役所
        一帯にあった中崎海岸を埋め立ててしまった。東部海岸ではその後、明
        石海峡大橋の着工に合わせて大蔵海岸の埋め立て事業を強行し、東部海
        岸から浜辺が消えた。
        
         西部海岸でも、1960年代初めに県が二見、別府、高砂の各港湾を
        埋め立てて東播磨港建設を計画。漁業者の猛反対の末、人工島方式で東
        播磨港の建設が進み広大な二見人工島(226ヘクタール)が1970
        年代半ばに埋め立て造成された。このほか、一時は大久保の八木海岸を
        埋め立てて下水処理場を建設する計画や明石川河口の両岸を埋め立てて、
        県立高校や下水処理場などをつくる計画も立てられたが、反対運動もあっ
        ていずれも潰えた。
        
         日本ウミガメ協議会のホームページを見ると、海に囲まれた日本の浜
        辺には広くウミガメが上陸・産卵している。ウミガメが生きられない環
        境になったら、人間の生存環境も危機に瀕しているといえる。明石にお
        けるウミガメの上陸・産卵復活の20年は、海に面して生きるまちの海
        辺のあり方に、歴史の裁断を与えているように思える。ウミガメの産卵
        復活に感動し、保護をめざす人たちは、相次ぐ惨事を引き起こした大蔵
        海岸のように、見かけだけの「ネコの額のような人工砂浜」をつくった
        愚を改めることにも目を向けるべきではないか。

                ※明石市のホームページ「ウミガメ脱出ダイジェスト」
                         (赤外線動画が発信されています)
               http://www.city.akashi.hyogo.jp/seisaku/news/umigame.html

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ まちづくり異聞(イベント案内、その他)

        _/_/ 住民自治の仕組みを考える連続講座
                 明石まちづくり市民塾が開催中
          _/ 第5回  9月21日(日)13:30〜16:30
             明石市生涯学習センター7階  学習室1
             大討論! 明石の住民自治をどう進めるか
                  討議メンバーと参加者全員が議論する
                  円卓会議方式の市民フォーラム
             明石市の自治基本条例検討委員会は7月18日、「基本的な考え
             方」(中間まとめ)を発表し、市長と市議会に報告、8月9日に
             は市民を対象にした「報告フォーラム」を開催しました。9月中
             旬からは28の小学校区単位に意見交換会(タウンミーティング)
             を開き、中間まとめをめぐって市民の意見を聞く場を設けようと
             しています。
              しかし、中間まとめを見ても、「自治体(明石市)の憲法」を
             つくることになる自治基本条例の中身が市民に周知されていない
             だけでなく、検討委員会の中でも議論がされていない、あるいは
             議論不十分な重要課題が少なくありません。とりわけ「住民自治
             を担う地域の自治組織をどのように形成し、運用していくのか」
             「市の行政は本格的な住民主体のまちづくり、住民自治の仕組み
             によって、行政運営をどのように変えていくのか」「地方自治に
             おける市民の直接参加(直接民主主義)をどう保障していくのか」
             などについては、ほとんど議論がされていません。
             「明石の住民自治の仕組みを考える」連続講座・最終回は、こう
            した状況を踏まえて、自治会や市民団体、行政職員、議員、そして
            検討委員会の委員などが一堂に会して、具体的な明石の住民自治を
            どう進めていくのか、まちの実態に即した議論を展開したいと考え
            ています。(明石まちづくり市民塾の案内から)

                ※ 明石まちづくり市民塾のHP
                   http://jichi-akashi.com/shimin-juk.html

        _/_/ ヒロシマ平和宣言
         被爆63周年の今夏、ヒロシマ平和宣言と長崎平和宣言のいずれもが
        気になった。ある大学の教職員全員に学内ネットでヒロシマ平和宣言が
        配信されたということを聞いて広島市に問い合わせたら、市民局国際平
        和推進部平和推進課長の手島信行さんから丁重な返信が届いた。
         宣言文は広く流布して欲しいという秋葉忠利市長名の依頼状を付けて、
        国内は在日大使館・領事館、衆参両議院議員、教育機関、平和関係団体
        など約3200件、海外は国連代表部、在外大使館、平和記念資料館関
        係団体・個人など約1700件に郵送するほか、電子メールでも約84
        0件国内外に配信しているそうだ。
         平和は口先だけで唱えていても広がらない。看板だけの自治体も少な
        くない。広島市の地道な努力に敬意を表して、私も配信のお手伝いをし
        たい。まだお読みでない方は、下記のURLをクリックしてみてくださ
        い。

※ ヒロシマ平和宣言
http://www.city.hiroshima.jp/www/contents/0000000000000/1110537278566/index.html

※ 長崎平和宣言
http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/abm/heiwasengen/sengen_j.htm

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ 発行: 市民まちづくり研究所 / 松本誠 MATSUMOTO,Makoto
        http://matsumoto2008.com
        e-mail:makoto@matsumoto2008.com
        e-mail:matsumoto-mk@nifty.com
        ※ご意見・ご感想をお寄せください。
        ※バックナンバーはホームページにアップしています。
        ※転送・引用・その他の活用を歓迎します。
         活用に際しては発行者の著作であることがわかるようにしてください
                                      _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

← 第9号 | ▲上へ | → 第11号  《発行一覧》

最終更新時間:2008年10月07日 06時20分24秒