トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

mm006


← 第5号 | このページ | → 第7号  《発行一覧》

第6号 2008.4.25 まこと流まちづくりの地平

                     _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
                   _/_/ まこと流まちづくりの地平 _/_/
                 _/_/_/ 第006号_/_/ 2008/04/25 _/_/

_/_/_/ 呑兵衛逍遙
                   公共土木事業をめぐる“せめぎ合い”
              「土建国家」を推進、支配する財政構造にメスを

         道路特定財源の一般財源化やガソリン税の暫定税率撤廃による大幅な
        ガソリン価格の低下などによって、道路を中心とした公共土木事業のあ
        り方と税金のずさんな使われ方が、庶民の前に否応なくクローズアップ
        された。道路だけではない。公共土木事業のもう一つの旗頭でもあるダ
        ム建設についても、並行してその正当性が問われつつある。

        _/_/ 第三者機関によるダム不要論への“官”の抵抗

         2001年に発足して以来8年の経緯を経て、淀川水系のダム建設計
        画に異を唱えてきた国土交通省近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流
        域委員会」が4月9日、同省が計画中の4つのダムに対して「治水効果
        は極めて小さい。ダム以外の治水対策の検討を尽くしていない」と必要
        性を否定する見解をまとめた。

         同委員会は2003年に同じ理由から、計画中の5つのダムを建設し
        ないとの提言をまとめたが、国は昨年この委員会を一時休止し委員の半
        数を入れ替えて半年ぶりに再開、委員会の提言に反して4つのダムの建
        設を推進する河川整備計画の原案を提示した。今回の委員会のダム否定
        意見書は、出席した20名の委員のうち19名が一致、残り1名も委員
        会としての結論には反対しない考えを表明して、全会一致の結論だった。
        同整備局は、なお「ダム建設は必要だ」と主張し、次回の委員会で反論
        する考えを表明している。

         ダム問題をめぐる第三者機関の提言は、筆者が委員長を務めている兵
        庫県の武庫川流域委員会でも5年越しの議論をつづけ、委員会は県に対
        して武庫川ダムは必要ないことを提言している。一時はダム計画を白紙
        の状態に戻して委員会を設置した兵庫県はなお、ダム計画も検討対象に
        固執して整備計画の原案づくりを進めている。ダム建設をめぐる議論は、
        ここ数十年来、全国各地で計画を進める行政と反対運動が真っ向から対
        立してきたが、ここにきて行政自らが選んだ第三者機関の結論とも対立
        する事態になっている。何ゆえに、行政はここまでダム建設に固執する
        のだろうか?

        _/_/ ダム建設志向を促す予算付けの構造

         そんな動きの中で、ダム問題が現在の道路問題と深く結びついている
        ことがクローズアップされてきた。

         4月12日の毎日新聞の報道によると、ダム問題の象徴的なケースの
        一つである群馬県長野原町の利根川水系吾妻川中流に計画され半世紀に
        およぶ反対運動に立ち往生している「八ツ場(やんば)ダム」計画では、
        道路特定財源を原資とする「道路整備特別会計」(道路特会)から水没
        予定地の付け替え道路建設に約170億円が支出されていた。この資金
        は、公表されているダムの総事業費には含まれていない。肝心のダムが
        姿を見せないまま、付け替え道路はすでに5割が完成し、潤沢な道路特
        会による周辺整備だけが進んでいるという。

         ダム建設に伴う巨額の費用の一部を、道路特会が肩代わりして見かけ
        のダム事業費を圧縮して見せている問題もさることながら、約4600
        億円にのぼるダムの総事業費は「治水特会」と呼ぶ治水特別会計から支
        出される。

         ダム建設で常に問題になっているのは、治水事業の中でもダム建設だ
        けは特別の会計から優先的に補助金が支出される仕組みだ。堤防強化や
        河道改修などの治水事業は、気の遠くなるほどの長期間をかけて少しず
        つしか予算がつかないが、ダム計画だと一挙に巨額の予算が優先的につ
        く。したがって、河川行政担当者は「ダムなら時間的にも治水効果が早
        く現れる」とダム事業に頼る傾向が強い。ダムに投じる予算を堤防強化
        など河川改修に使うように求めても「財布が別だから、河川改修ではカ
        ネがつかない」と消極的になる。

        _/_/ 土木特定財源を廃し、自治体の裁量権強化を

         かつて、四国の中山間地にある過疎地域の地域振興策について現地を
        訪れた際に、道路に投じる予算を何にでも自由に使っていいとしたら道
        路拡幅に投じるかと町長らに尋ねたことがある。答えは異口同音に「道
        路だったらお金がついてくるが、道路に使わないとお金は回ってこない。
        何に使ってもよいと同じ金が回ってくれば、道路なんかには使わない」
        という反応だった。

         戦後日本の財政構造が「土建国家」といわれたのは、道路やダムに巨
        額の税金を投入する仕組みをつくりあげて、都道府県や市町村を誘導、
        支配してきたからである。

         政府の地方分権改革推進委員会がいま、こうした道路や河川整備の事
        務・事業を国から地方へ移譲する第2次分権改革を進めようとしている
        が、省庁側は真っ向から抵抗している。委員会は5月末にもまとめる第
        1次勧告にはこうした見直しを盛り込む構えだが、仮に道路や河川整備
        の権限を地方へ移譲できても、特定財源をバックにした特別会計で国が
        優先的に予算付けする仕組みを残したままでは、金がつきやすい道路や
        ダムに自治体行政が相変わらず依存する体質はぬぐえない。

         道路特定財源の一般財源化に自治体は“反対の大合唱”だが、大本の
        ところで分権改革を進める姿勢を見せないと、形ばかりの分権化のまま
        いつまでも中央支配のくびきから脱することができない。

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ 明石まちづくり小史 <6>
    === 明石海峡大橋開通から10年、消えた大蔵海岸の”幽霊ビル”===
           無謀な開発優先行政が生んだ財政負担と、いのちの犠牲

         この4月初め、明石海峡大橋はじめ瀬戸内に架かる本四架橋3ルート
        は、メディアの脚光を浴びた。明石海峡大橋が開通してから10年、岡
        山―坂出ルートの瀬戸大橋が開通して20年の節目を迎えたからだ。広
        島―愛媛ルートの「しまなみ海道」も含めて、いずれも利用通行台数が
        当初予想を大幅に下回り、赤字を重ねて自治体や国の”出資金”という
        名のもとに巨額の税金が投入され続けていることも、盛んに報道された。
        全国の高速道路網とともに、将来への膨大なつけ回しが進行中である事
        実に、目をそむけるわけにいかない。

         さて、明石のお膝元でも、明石架橋に”夢”見て巨額の税金を投じ、
        バブルの悪夢となった大蔵海岸埋め立ての失敗例が、また一つ歴史を重
        ねたことが明らかになった。

         明石海峡大橋開通による観光需要を当て込んで貴重な藻場を埋め立て
        た大蔵海岸に、完成直前で工事がストップしたまま9年間放置されてい
        た通称「幽霊ビル」が解体されて更地になった。その跡地に、今度は岡
        山の食品主体のディスカウントストアが出店する話が進んでいると神戸
        新聞に報道された(4月18付け明石版)。

         大蔵海岸埋立地は、明石海峡大橋の着工が決まった1980年代の後
        半に神戸市の舞子、垂水海岸の埋め立てとともに計画された。時はバブ
        ル経済の真っ只中。埋立地にホテルやレジャー施設を誘致し、土地を売
        却すれば埋め立て費用を回収できて、観光客が押し寄せてまちの活性化
        を図れるという「ばら色の夢」が描かれた。18万7000平方メート
        ルの埋立地のうち約5万平方メートルをホテルやマリンスポーツセンター、
        魚の町広場などに売却し、埋め立て造成費用約270億円を回収しよう
        という皮算用だった。

         計画が具体化したのはバブル経済が崩壊し、戦後初めて土地価格の下
        落が始まった1991年の秋だった。すでに、大阪の関西国際空港対岸
        に埋め立てた開発用地りんくうタウンでは、土地の売却が暗礁に乗り上
        げ、大幅な土地価格の下落が始まって大騒ぎになっていた。明石でも、
        大蔵海岸周辺の住民らを中心に埋め立て反対運動が高まっていたが、市
        はこうした警告を押し切って93年に予定通りの計画のまま埋め立て免
        許を申請し、着工した。着工から1年半後には阪神・淡路大震災に見舞
        われたが、いち早く工事を再開し98年4月の大橋開通に間に合わせよ
        うとした。

         埋め立て造成事業は大橋開通までになんとか間に合ったが、土地の売
        却は全く立ち往生し、大橋完成イベントは更地の埋め立て地で行われた。
        かろうじて唯一地元の事業者に売却できたのが、レストランビルの建設
        計画だった。土地を買った地元の事業者は自ら事業に乗り出さず、三井
        信託銀行を中心にした大手企業5社による土地信託方式に委ね、鉄筋4
        階建て、延べ床面積9500平方メートルのレストランビルの建設が始
        まった。

         ところが、それも束の間、建物の概観が整った完成直前で工事がストッ
        プ。20数店舗計画されたテナントが集まらず、当初の99年春の開店
        予定を一年延ばしにしながら、総事業費25億円をかけたビルはそのま
        ま9年間にわたって放置された。

         大蔵海岸の埋立地はその後、土地売却をあきらめて賃貸に切り替え、
        誘致事業も二転三転しながら、現在のように入浴施設、スポーツジム、
        住宅展示場、大型スポーツ用品店が軒を連ねる。そこへ飲食施設の代わ
        りに食品スーパーが出てくる見通しになり、当初の海岸の利用計画とは
        似ても似つかないものになった。

         大蔵海岸の埋め立て事業は、市バスや病院、水道などの公共事業以外
        では明石市が初めて手をつけた独立採算を前提にした企業会計で進めた。
        当初は「市民には一切負担をかけない」と公約し、造成完成時点には土
        地の売却を終えて企業会計を閉鎖する予定だった。したがって、資金は
        すべて銀行からの借り入れで行ったため、売却が進まないことから金利
        が雪ダルマ式に増えていく。このため、震災直後の95年度にはいち早
        く赤字の穴埋めのために一般会計から補填することに転換し、借金の半
        分以上にあたる150億円を税金で肩代わりした。それでもまだ、90
        億円余りの借金を抱え、地代は利息に届くかどうかの状態のために、企
        業会計は閉鎖されないまま先の見通しがつかめない状態である。

         大蔵海岸埋め立て関連に投じられた税金は、これだけではない。第二
        神明道路大蔵インターからまっすぐ南下して大蔵海岸に直結するアクセ
        ス道路朝霧―二見線は、JRや山電、国道2号線を跨線橋で越える大が
        かりな道路事業で百数十億円を要した。いま建設中の県道黒橋線も大蔵
        海岸へのアクセス道路として当初は計画され、巨額の事業費が投じられ
        ている。

         7年前の2001年7月21日に起きた「大蔵海岸花火大会事件」は、
        このような中で発生した。大蔵海岸へなんとか企業誘致を果たしたいと
        いう市の焦りが、安全を軽視した大型イベントの強行につながり、11
        名の命を奪った。5ヶ月後には、同じ場所で砂浜陥没事故を起こし、ま
        た一人の幼児を犠牲にしてしまった。

        ※大蔵海岸花火大会事件の背景と教訓については、松本誠著『市民が変
          える明石のまち』(2003年3月、文理閣刊、500円)を参照く
          ださい。

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ まちづくり異聞(イベント案内、その他)

        _/_/ 執筆本の紹介『川辺の民主主義』

         河川とダム行政から民主主義のあり方を問う本が出版されました。
         昨年8月に徳島で開かれた「川を流域住民が取りもどすための全国シ
        ンポジウム」を契機に、全国で川づくりやダム問題に取り組んでいる人
        たちが連携して書いた本です。
         私、松本誠も、兵庫県の武庫川流域委員会の委員長として4年間取り
        組んできた経験を踏まえて、「分権時代の川づくり―二級河川・武庫川
        でめざしたもの」を執筆しています。
         徳島の吉野川をはじめ、全国各地の川づくりの現場から13本の報告
        と問題提起が盛り込まれています。
        <ロシナンテ社編、アットワークス発行。4月10日刊。本文203頁。定価
        1500円+税>
        ロシナンテ社 〒605-0974 京都市東山区泉涌寺五葉ノ辻町28
        TEL & FAX 075-533-7062 e-mail: musub@big.or.jp
        http://www9.big.or.jp/~musub/

        _/_/ 住民自治の仕組みを考える連続講座 (明石まちづくり市民塾主催)
             _/ 第1回 5月25日(日)13:30〜16:30
             明石市生涯学習センター8階 学習室2
             「住民自治とは何か?」
             講師:富野暉一郎さん(龍谷大学法学部教授、元逗子市長)

        _/_/ まちかど寄席「西明石浪漫笑」200回記念公演
             「鶴瓶・梅団治二人会」
              6月8日(日)午後2時〜4時
              明石市民ホール(明石駅前「らぽす」5階)
              参加券 2000円
              申し込み、問い合わせ先:HANAZONO(西明石)
              電話 078-928-2719

・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−・・−

_/_/_/ 発行: 市民まちづくり研究所 / 松本誠 MATSUMOTO,Makoto
        http://matsumoto2008.com
        e-mail:makoto@matsumoto2008.com
        e-mail:matsumoto-mk@nifty.com
        ※ご意見・ご感想をお寄せください。
        ※このメールマガジンのバックナンバーは上記のHPにアップしています。
    ※転送・引用・その他の活用を歓迎します。
         活用に際しては発行者の著作であることがわかるようにしてください。
                                      _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

← 第5号 | ▲上へ | → 第7号  《発行一覧》

最終更新時間:2008年06月13日 22時52分06秒