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明石駅前南地区再開発についての意見書


明石駅前南地区再開発事業についての意見書

 今般公募された表記事業についての意見書を、下記の通り提出いたします。
 なお、本意見書の公募については、市が通常行っているパブリックコメント制度にもとづく意見募集であるとは明示されていませんので、通常のパブコメの取り扱いとは違って、提出した意見に対しては個別に回答するとともに、意見交換できる場を保障されますよう、お願いいたします。

1.再開発事業について「3択」で回答することについての意見

 大規模な開発計画について市民の意見を聴取する際には、提示する計画が一つしかないのは妥当ではありません。市が“本命”とする計画のほかに、実現可能な複数以上の計画を提示して、市民が比較検討できるようにするべきです。自治基本条例を施行して、計画段階からの「市民の参画と協働、情報共有」を市政運営の3原則としている中では、なおさらのことです。

 市の計画に賛同する以外には「計画を一部変更して推進」「計画を推進しない」という選択肢しか用意されていないのも問題です。市は市議会の答弁等で「再開発をせずに、現状のまま放置するのは良くない」という趣旨の説明をしばしばされていますが、「再開発をする」ことと「現状のまま放置する」ことの間には、たくさんの選択肢があるはずです。少なくとも「計画の一部変更」にとどまらず、「計画を大幅に変更して、駅前整備を行う」道筋はいくらでもあります。
 この3択の設定は、現状計画または一部変更しての推進へ誘導する、極めて恣意的なアンケートで、この意見聴取作業の妥当性と信頼性を低めるものになっています。

 以上の意見を前提として、3つ選択肢の中から選ぶとすれば、「3 計画を推進しない」となります。
 ただし、上記に記載したように、この意見は「現状のまま何もしない」ということでは決してありません。他の回答された市民もきっと、同じような思いで回答されたと思います。



2.現状の計画を推進してはいけない理由

 現計画は、とっくの昔に全国的に破たんしたコンクリートの“箱もの”再開発計画の典型例であり、明石市でもアスピアで失敗したばかりの教訓を何ら生かしていない“まちこわし”計画になる恐れが濃厚です。明石市の中心市街地のまちづくりのコンセプトとも反するもので、明石の中心市街地の活性化に寄与しないだけでなく、駅前に巨大なゴーストタウンを将来出現させることになりかねません。

 現計画は民間の土地・建物所有者による組合施行の再開発事業としていますが、実態は市施行の公共事業に等しく、民間活力を育てていくことにはなりません。アスピアも全く同じで、震災で倒壊建物が増大したのに乗じてデベロッパーに用地買収させて、事実上、市施行の公共事業として進めてしまいました。そのツケはいま、そっくり市民の肩に降りかかろうとしています。

 今日の経済状況下で駅前再開発事業における商業核テナントの誘致は不可能に近く、その結果最初から市役所が核テナントにならざるを得ない計画として進められました。つじつま合わせのように、庁舎サービスのあり方を検討する組織を立ち上げて、「窓口サービス機能」を駅前に集約することや「5市民センター構想」などが付加されましたが、いかにも「再開発ありき」の進め方です。
 本来はまっとうに議論するべき市役所機能のあり方や、窓口サービス機能のあり方、庁舎のあり方が、再開発に引きずられて誤ってリードされているきらいがあります。

 広報紙に織り込まれた計画紹介資料の中で、資金計画の概要の説明も問題です。昨年の計画策定時の資金計画から金額が動いていることも不可解ですが、「市民一人当たりの負担額 4万3730円」はおかしい。「明石市の負担額」が127億8400万円であることはそうだとしても、市民は市の負担額だけではなく国や県の負担額(資料では93億円)も背負う納税者であり、市民が負担する税金です。このあたりが市民感覚とお役所感覚の違いなのでしょう。これを加えると、市民の負担額は7万5000円を超え、4人家族なら30万円に達することになります。
 この問題は、いま最も留意しなくてはならない財政問題との整合性につながります。中心市街地活性化だけみても、再開発以外にもたくさんの行政需要があり、いま明石市政はその選択と優先順位にシビアーな対応が求められているのではないでしょうか?

 いわば、巨額の公的投資をしてもその成果が定かではない事業に、現時点で巨額の資金を投入するのは自治体として“自殺行為”に等しいと言えます。現在営業している事業者にとっても、アスピアの例が見事に示しているように、ビルの床は確保できても巨額の管理コストの負担に耐えられず事業継続できない店がたくさん出てくることは目に見えています。

 では、明石駅前南地区を当面はどのようにすべきなのでしょうか? 遠い将来的に大きな事業が可能になればその時点で考えても遅くはありません。いま必要なのは、物理的に使えないビルや空間が放置されているのを改善し、駅前を人が集まり、賑やかなまちにしていくことです。大きなビルを建てて、明石駅に着いたお客さんの視野からこれ以上、明石海峡や淡路島、南部の市街地を目隠ししてしまうことは明石にとっては大きなマイナスです。アスピアが、明石中心市街地の固有景観をどれだけ損なってしまったかを考えれば十分です。
 すなわち、駅南地区は明石の南部市街地や明石海峡を望む景観とマッチし、国道以南の町並みや商業地域と調和を図る設計が重要です。同時に現在の経済情勢は当面大きな好転が望めないかぎり、巨額の財政圧迫を強いる大規模投資を極力避けて、そこで営業する事業者にも負担を強いることのない方策を選択すべきなのです。

 以上のような条件を考えると、次のような方向で地区を整備していくことも一つの案として考えられます。
 まず当面は、大規模高層化の再開発は見送り、地上空間で国道以南地域と一体化した「賑わいゾーン」と位置づけ、当面は利用できない建物は撤去し、跡地を中心に既存の路地も生かして一帯を「駅前バザール」のような仮設市街地として活用します。つまり「ローコストの市街地整備計画」です。16年前の震災と駅前再開発事業で、神戸・阪神間からは庶民的なくつろげるローコスト繁華街が姿を消してしまいました。明石の立地条件からすれば、近郷近在から(神戸・三宮方面からも)庶民的な賑わい空間を求めて人が集まってきます。神戸学院大などの大学生も母都市である明石駅前を「我が庭」として利用し、若者が集う街になることが期待できます。
 何よりも、平面空間の町並みが主体の国道以南の遊休店舗や“しもた屋”の活用等を刺激し、魚の棚を中心とした明石の“顔”ともマッチした駅前空間を生み出す可能性があります。
 これからの都心空間はこのようなレトロな斬新さが求められますが、将来、経済的な回復が見込まれ、新しい発想のまちづくり案ができれば、その時点であらためて検討すればよいのです。



3.今回の「3択」意見聴取の取り扱いについて

 今回の意見聴取の方法は、3択で賛否を問うなど「疑似住民投票」のような体裁を取っています。しかし、この方式には以下のように大きな落とし穴と問題点があります。

 上記に述べたように、このアンケート設計は極めて恣意的な内容であり、「現行計画の推進」へ誘導する設問形態になっています。駅前整備について多様な意見を聴く設計がなされていません。

 市民の意見を広く聴く「住民投票」は、選挙人台帳にもとづき、選挙管理委員会の管理のもとに厳格に実施されます。投票率も有権者数を分母としてどれだけの市民が関わったかが明示されます。
 しかし、今回はアンケート結果を集計・分析する際に、回収率をどのように設定するのかも明示されず、「中間発表」数字も公表されました。投票における集計結果の中間発表は、その後の投票に恣意的な誘導が生じかねませんから、行うべきではないのは自明の理です。人口29万人の明石市で、この調査結果をどのように評価するのか、仮に1万人の回答があったとしても市民の数%程度の意見を数量的にどのように評価し、尊重するのかが問題です。
 さらに、意見数が少ないほど、組織的な“動員”による歪んだアンケート結果になる可能性が懸念されます。再開発事業は、一般市民の関心よりも事業に関わる地権者や関係者、事業の受注で大きな利益を上げることのできる業界関係者も強い関心を持ち、アンケートに関わる可能性が懸念されることは、九電事件でも示された通りです。市はこのような懸念をどのように払しょくする手立てを講じているのかについても、明らかにする責任があります。

 以上のことを考えると、人口や有権者数に比べてあまりにも少ない回答数の場合には、3択に対する数量的な意見の多寡は参考にすべきだはないと考えます。
 そもそも、今回のアンケート実施に際して、担当部局は上記のようなことまで検討して行ったという形跡はありません。もし、数万あるいは10万通ぐらいの回答を想定したのなら、郵送回答費だけでも1000万円ぐらいの予算が必要になりますが、そのような予算計上がされているとは聴きません。極めて安易なアンケートで、総数が数千通であっても、現状計画の推進が広く支持されたというような捉え方をしようとしているのではないかという危惧の念が消えません。



4.おわりに

 
 泉市長がこの再開発計画について「市民の意見をじっくり聴いて、計画の妥当性をさまざまな観点から見直したい」と表明されていることについては、高く評価しております。
 今後、この見直しの作業が、既成事実に左右されることなく、「見直し」に値する手順と内容で、自治基本条例にもとづく「参画と協働、情報共有」の試金石となるよう期待します。

以上

2011年7月17日
明石市中心市街地活性化プロジェクト様

明石市太寺4丁目9-17
松本 誠
E-mail:matsumoto-mk@nifty.com
(市内在住)

最終更新時間:2011年09月07日 08時15分40秒