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まこと日誌/2007-7-19


飛び出す人文・社会科学

 この16日に宝塚・売布の「ピピアめふ」で、小さな討論集会が開かれた。「サイエンス・カフェ:武庫川の総合治水実現に向けて」と題して、20人ほどが4時間近くにわたって議論を繰り広げた。
 日本学術振興会人文社会科学振興プロジェクトの研究事業で、大学や研究機関の研究者と地域住民が興味・関心のある社会の問題について語り合う、一種のワークショップである。「飛び出す・人文社会科学〜津々浦々学びの座〜」と銘打って、全国各地で開催しようとしている。

 今回の「カフェ」を主催したのは「青の革命と水のガバナンス研究グループ」。中心メンバーの東京大学愛知演習林の講師、蔵治光一郎さんによると「青の革命」とは、「緑の革命」(約半世紀前に地球上の人口爆発の将来予測とともに、食料増産を具体化するための灌漑などの技術開発や農薬や肥料の開発が提唱された)をヒントに20世紀の終わりごろから世界的に提唱されている“地球規模”の課題。
 21世紀は地球規模で「水」が大きな課題になり、石油をめぐって争った20世紀に対して、21世紀は水をめぐって争いが起きるとされている。これまで水の確保や制御は土木工学的は技術で一定の成果を得てきたが、もはや、地球規模的にその限界が見えてきた。世界的な乾燥と砂漠化で水が消えていく一方、異常な集中豪雨や洪水が局所的に起こり、その不安が広がっている。自然科学的な技術だけでは解決はむずかしく、政治や法律、社会や経済の仕組み、地域の歴史や文化とも連携し、多様な分野が知恵を寄せ合わせて対応していかなければならなくなっている。水資源の確保と調整、洪水被害などに対応して紛争を回避していくための合意形成が求められている。

 そんなテーマを持った研究者グループと、具体的な武庫川の川づくりに取り組んでいるグループが出会って、開かれたのがこの日の「サイエンス・カッフェ」だった。
討論は、武庫川の川づくりでダム問題を超えて流域圏100万人の住民と自治体が、この川と共に生きていく道筋(川筋?)をどのように切り開いていくか―をめぐって議論がすすんだ。

・武庫川の特徴、流域住民の川に対する誇りや夢をどのようにまとめあげて、住民や自治体の関心を高めていくのか?
・川は、その水によって人々の暮らしが支えられ、流れる水が循環して川と自然の循環系が維持されることによって、流域のまちと暮らしが共存していける。
・川に生息する植物や動物、とりわけ魚が生息し、人の暮らしとつながっている川は、流域住民とのつながりや愛着も深い。
・戦後の武庫川では、川と暮らしのかかわりが希薄になり、流域圏人口の6割を占める下流域の氾濫域でも、武庫川の堤防決壊や越水などの致命的な被害の経験がないことから、武庫川への住民の関心は薄い。
・住民のこころに響く武庫川づくりのキャッチフレーズと市民の自律的な運動、歴史や文化に根ざした運動とともに、武庫川の存在が経済的なインセンティブに結びつくような方策、多様な分野が“融合”した新しい「武庫川学」のような研究組織、総合治水を本気で進めていくための総合治水条例の制定なども必要
――だという議論が交わされた。

 7月6日から全体委員会が再開された武庫川流域委員会は、県が提示した武庫川整備の基本方針原案について、24日の第51回流域委員会から本格的な審議が始まる。委員会のメンバーの多くは、昨年8月の提言書にもとづき、超長期的な武庫川整備の考え方を表す「基本方針」は、武庫川づくりの「憲法」だと思っている。まちづくり、自治体の憲法が「自治基本条例」だとすると、それに匹敵する重い議論がこれから始まるわけだ。

最終更新時間:2008年01月06日 21時55分08秒